SAM日本チャプター 2026年 会長方針
2025年10月17日、SAM日本チャプター創立100周年記念式典、記念事業、交流会を盛大に開催できましたことは、会員をはじめ、ご来賓、関係者の皆様のあたたかいご理解とご支援ご協力の賜物と厚くお礼を申し上げます。
創立100周年という大きな節目を迎え、慶応義塾大学の渡部直樹名誉教授による書籍『テイラー「科学的管理法」再考』を発行できることを大変嬉しく思います。本書は、これまでの100年の歩みを振り返るとともに、次なる時代に向けて、私たちの使命を改めて見つめ直す機会として刊行いたしました。
これまでSAM日本チャプターは、創立80周年、創立90周年の節目ごとに記念事業を実施し、日本のものづくりや経営思想の本質を問い続けてまいりました。
創立80周年記念式典では、当チャプターの会員でもあったトヨタ自動車株式会社の故・豊田章一郎名誉会長より、未来志向のものづくりの重要性について貴重なお話をいただきました。また創立90周年記念講演では、次世代を担う学生の皆さんも招き、「モノづくりと人づくり」をテーマに日本的経営の価値を広く発信して頂きました。
また、オムロン株式会社の故・立石信雄名誉会長には、創立90周年を記念する小論文コンクールやスタートアップ支援事業をはじめ、今回の創立100周年記念事業に至るまで多大なるご支援を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。
そして創立100周年記念事業では、テイラーの科学的管理法を再考する書籍『テイラー「科学的管理法」再考』を刊行することができました。本書は、日本におけるテイラー理解に根強く残る誤解を正し、AI・デジタル化が進む現代においても有効な理念として再提示する試みです。著者である慶應義塾大学名誉教授・渡部直樹先生のご指導のもと、会員一同が調査・研究を重ね、日本企業の経営に与えてきた影響を多角的に検証致しました。
さらに、本書をはじめ創立100周年記念誌『テイラー思想、再起動。そして未来へ』には多くの会員が未来の経営論を寄稿してくださり、これからの経営理論を考えるうえでの貴重な架け橋となったと自負しております。
SAM日本チャプターが設立されたのは、大正から昭和へと時代が移り変わる頃でした。そして2025年は、昭和100年、さらには戦後80年という歴史的な節目でもあります。20世紀前半、第一次世界大戦後の好況から世界恐慌、そして第二次世界大戦へと続く激動の時代を経て、社会や経済の急激な変化は人々の価値観を大きく揺さぶってきました。
戦後の日本を支えてきた年功序列や終身雇用といった制度は、かつて繁栄と安定をもたらしましたが、今やその時代は終わりを迎えています。人口減少、産業の空洞化、そしてコロナ禍を経た社会構造の変化により、日本は新たな選択を迫られています。一方で、AI・デジタルの急速な進化により、半導体産業やモビリティ社会の構築など、ものづくりを基盤とした国家戦略も再び動き出しています。
こうした状況の中で、テイラーの科学的管理法を論じることは、日本において特有の難しさを伴います。というのも、日本では理論そのものよりも、現場で培われた実践や成果が重視されてきたからです。それでもなお、テイラーの科学的管理法の根底にある「人を最も大切にするものづくり」という理念は、時代や技術が変わっても決して色あせることはありません。
SAM日本チャプターは、この本質を正しく理解し、次世代へと伝えていく責任を担っています。創立100周年を機に、更に過去100年の歩みを振り返ると同時に、これからの100年を考える活動を積極的に開催していきたいと思います。今後とも、会員の皆様の変わらぬご支援とご協力を賜りながら、会員相互の研鑽と、社会に貢献する活動を続けてまいります。